「捕まえた」
「離してください」
「ダメ、離さないよ」
カーテンは閉められておらず、私たちを囲うものは何もない。
誰かが保健室に入ってこれば即アウトである。
「息苦しくないの?
つまらない生き方して」
彼の左手が私の長い髪を耳へとかかる。
その手つきがくすぐったい。
「楽ですから」
「楽、ね…これが価値観の違いか」
うんうん、とひとりで納得している彼。
いいから離してほしい。
「いい加減にしてください。
さっきから何なんですか」
「ここに来た時点でキミは真面目じゃなくなったんだよ、おめでとう」
「何言っ…んっ」
言い返そうとする私の唇を、彼は自分の唇で強引に塞いできた。



