「んん……」


もう少し大きく肩を揺らすと、音羽くんは眉間に皺を寄せた。


ほくろのひとつもない綺麗な白い肌。


窓から差し込む光がちょうど瞼を照らすと、「ううーん」と余計に顔をしかめた。


「起きて……もう授業おわったよ」


「まだ眠い……衣川さん、膝かして」


そう言って手繰り寄せられたあたしの膝に重さが加わる。


「え!?」


「いい高さ……」



そう言って、また眠っちゃった……?


「ちょ、ちょっと!ねぇ、音羽くん起きないと」


あたしはこんなに焦っているのに。


まるで日向ぼっこをしている子猫みたいに気持ちよさそうに目を閉じている音羽くんは、静かに言った。



「衣川さんの声って可愛いよね」


「へ?」


「起こされるのって嫌いだけど、衣川さんの声だと気持ちいい」


な、何言ってるの、音羽くん。


「子守歌みたい。余計眠くなる。おやすみ……」


すーっと寝息を立てる音羽くん。


え……と。


あたし、どうしたらいいの……?