「俺にもピン一個貸してよ」


そんなことなら……ふつうに言ったらいいのに、どうしてこんなことするんだろう?


困惑しながらも赤面を隠せないあたしは顎に触れている彼の手をそっとよける。


「いいけど……えっと……。取れない。ルイちゃん、ピン外してくれる?」


ルイちゃんに後ろ頭を向けたら、駆くんが「俺がとってあげる」とにやりと笑う。


「え!?」


つい声が出てしまった時には、駆くんはあたしの隣にぴったり座っていて、甘い匂いがすぐ近く。


うう……ドキドキしちゃうよ……っ。


そんなあたしはおかまいなく、駆くんはルイちゃんに問う。


「ルイちゃん、これどうやって外すの?」


「えっ、っとぉ、ここを押してここを外すの」


「お。できた」


すぐそばで嬉しそうに笑う駆くん。


「俺女子のピン外したの意外と初体験」


……は、つ。


「……っ、そ、そうなんだ」


「あれだよね、ルイちゃん。今宵ってエロい単語に弱いよね? しかも小学生レベルの」


「あー……女子校育ちだしみんな遠慮なくそういうのクラスで喋ってたから。今宵の耳にも入ってたと思う。さすがに話には入っては来なかったけど」


「ルイちゃん……!言わないでよ……」


「じゃあある程度興味はあるわけだ、今宵ちゃん」


にやり、その視線から逃げるように、視界を床に向けた。


な、な、な、ないもん……っ。