「今宵ー」
その声に顔を上げると、渡り廊下の向こうから、体操服姿の駆くんが片手を振りながら歩いてくるのが見えた。
「噂をすればだね」
そう呟いたルイちゃんの隣で小さく手を振って、駆くんにこたえる。
駆くんはあたしの前で足を止めて「よ」といった後で、ルイちゃんにも「どーも」って笑いかけた。
ルイちゃん、正直ドキッとしてると思う。
「今宵ピンしてんの?なんで二個?」
「ポニーテールにすると、後ろの方ぼさぼさになったりするから、留めたくて」
「髪くるくるだもんな」
「……気にしてるのに」
「なんで?可愛いじゃん。俺この髪めちゃくちゃすき」
そう言って駆くんは、ルイちゃんがいるにもかかわらず、あたしの髪を手に取って、ちゅっとキスを落とした。
「いい匂い」