そういって、駆くんは一気に距離を詰めた。


唇が触れ合いそうな距離で、前髪同士がかすめてる。



その目はあたしを
いたずらっぽく眺めて……。



「今宵は……誰とでもこういうキスできんの?」


「それは……駆くんでしょ」


「俺はできないよ?」


嘘つき。

嘘にもならないほどの嘘を言う駆くんはやっぱり笑った。



「本当のキスする?」



駆くんのあたしをうかがう上目遣いに、
あたしは動けなくなった。



「合意の上でしかしたくないから。嫌なら拒んで」


唇と唇の間、およそ数センチで一回止まってくれた駆くんに。


……あたしは、どうして抵抗しないんだろう。


それどころか夢中になって
駆くんの瞳を見つめてる。



「……正直じゃん」