「駆くん……ドキドキしてない」


「……どこが」


「え?」


「そっち右だろ。俺の心臓さすがに左」


そういわれてずらした耳から聞こえてきたのは、駆くんの激しい心臓の音。


ぎゅうっと力が入って駆くんの体と余計に密着させられる。


「聞こえる?」


「うん……ドキドキしてる」



「……ちゃんと好きだよ」


どきんと心臓が鳴る。


だけど……素直には受け取れないよ。



「で……でも、こんなの女子とすれば誰にでもドキドキするよね?」


「なにそれ?今宵はそうなわけ?」


「それは……わかんないけど」


駆くんと違って、こんなことするのは、駆くんが初めてだから。


そう言ってしまおうかと思ったとき。


「ふーん。俺は今宵にこういうことしてたらドキドキするし――」


声が、髪から頬に落ちてきた。



「――もっとしたくなるよ?」