駆くんの頭にめがけてポカーンとなにかが飛んできた。


「……お前学年のお姫様に何やってんだよ!!」


丸めた教科書を片手にもっているのは、茶髪にピアスがいっぱいついた男子。


「おー、理生(りお)。つうか、いてーよ」



ぱっと離れた体は全身が心臓みたいにバクバク言っているのに。



駆くんはもうあんなに平気そうに友達と話しているんだもん。



……ひどい。



「うわー今宵ちゃんだよね?可愛すぎて俺直視できねーわ」


「とかいって理生がんがん直視してんじゃん。今宵、こいつ中学からの連れの理生」



「あ……どうも」


消えそうなあたしの声はもちろん理生くんに届かなかった。



理生くんという人は、いかにも遊んでいそうな見た目で、誠実そうな爽やかさがある駆くんとは、正反対に見える。



でも、ふたりはきっと同じ種類。

ふたりとも……軽い人。



「今宵、向こう行こ。俺はやく二人っきりになりたい」


駆くんはひどい。



あたしの反応を楽しむみたいに甘い言葉をささやくんだもん。