……二条先輩への当てつけでも、選んでもらえたならいいじゃん。
そう言い聞かせようとしてるのに、やっぱり苦しい。
だから声にして、自分を納得させるように言った。
「……付き合おうって言ってくれた時も、あたしのこと“それなりに好きなんじゃない?”とか言って、適当だったもんね」
「違う。不純ってそういう意味じゃない」
そういうと駆くんは薄くステンドグラスが光を漏らすだけの暗闇で、あたしの両頬を見事につまんだ。
「そうじゃなくて……ひとめぼれ」
しんっとした。
ジャズの音が、廊下から流れてくる。
「なんで無反応? 数年ぶりの再会とかそういう運命っぽいのじゃなくて、弁当をぶちまけた子にひとめぼれ。そういう不純な動機で付き合ったよ。悪い?」
むにっと引っ張られる頬が痛い。
悪い、わけない。
……嬉しい。



