『どの店にいんの。なんて名前?』
廊下に面したステンドグラスから入るわずかな光をたよりに目を凝らす。
「あのね、大通りに面した雑居ビルの地下にある……“喫茶 フクロウ”」
『あ、わかったかも。一階にカラオケ屋入ってるビル? フクロウって、隣に赤ちょうちんの下がった居酒屋あるだろ?』
「うん! そこ!」
『フクロウって最近潰れなかったっけ?』
「多分営業してない……真っ暗で」
『ったく。今宵って……ほんとうに』
呆れ笑いが電話の向こうから聞こえる。
ドキドキして、その声が嬉しくて、涙がとまんなくて。
『泣いてんの?』
「……っ、泣いてない」
『うそつけ。すぐ着くから、いい子で待ってろよ?』



