駆くんはドアのところに立ったまま、呆然と見ていた。



「……ふたり、なにやってんの?」



低くて冷たい声が静かに空気を震わせる。


心臓がバクバクなり始めた。


唇をごしごしと拭って何回も謝った。



駆くんは音羽くんのほうを見向きもしない。



あたしだけに強烈に怒った目をむけている。




「……俺のキスは拒めたのにね。なんで?」




鋭い目と相反する落ち着いた声は、強くあたしを責めている。



「……」



拒む隙がなかった。



そういうあたしの言い訳は、声にもならなかったし、きっと言い訳にもならない。