翌日のあたしは、初めて駆くんにお弁当を作ってきた。



雑誌に彼女の手作り弁当にきゅんとしたって体験談が書いてあったから、真似したの。



「マジで作ってくれたんだ。嬉しすぎんだけど」



雑誌の言う通り、喜んでくれていると思う。



でもなんで、一口も手を付けないんだろう?



「……あの、食べたくないかな……?」



「んなわけないだろ。もったいないなぁって。だって食ったらなくなるし……」



そういってじーっとお弁当箱の中身を見つめてから駆くんはようやく卵焼きを食べた。



「うま」



「駆くんはだし巻きと甘いの、どっちがすき?」


「両方好きだけどどっちかと言えばだし巻きかなぁ」



「あ……ごめん今日は甘くて。次はだし巻き卵にするね」



「また作ってくれんの?」



やった、と笑う彼に、同じくらいの笑みで返したつもり。



「どーした? 今宵。熱でもあんの?」


額にのっかる手はひやりとした。


「……ないよ」



じぶんの頬が火照るのを感じる。


駆くんは、そうじゃないのに。



いつだって余裕綽々。その余裕がどうして生まれていたのか、よく考えればわかったことなのに、なんであたしは気付かなかったのかな。




……あたしのこと、好きになってほしい。



だけどあたしは、どうあがいても恋愛初心者。



どうやったら好きになってもらえるのかなんて全然わからないの。