ざぁざぁと強く降りしきる雨が窓を叩く。
「雨すごいし、送ろうか?」
きょとんとしてしまった。
「ううん、大丈夫。ありがとう」
雨が強いからって理由だけで、ただのクラスメイトを送ろうとするなんて、やっぱりすっごく親切な人なんだな……。
音羽くんってやっぱり友達が多いタイプだと思うのに。
「そ。じゃあ気を付けてね」
「うん、音羽くんも」
そうして教室をでようとすると、「やっぱ俺も行く」と日誌を奪われた。
「うん……?」
首を傾げて、職員室を目指す。
一緒に行く意味って、あんまりない気がするけど、まぁいっか。
歩みを進めて、あと少しで職員室というところ。蛍光灯に照らされた廊下で野球部が素振りをしているのが見えた。
「ここ通ったら邪魔になるね」
背中を押されて道を変えた彼の後ろについて、薄暗い廊下を進んでいく。
「あの、衣川さん……」
「なに?」
名前を呼んだ割に、音羽くんは一度押し黙った。
……なんだろう?
とりあえず言葉を待っていると、言いづらそうに顔をゆがめて彼は言った。
「前から思ってたんだけど、衣川さんって彼氏の噂って聞いたある?」
「……噂?」
ピカっと空が光って、すぐに雷鳴がとどろいた。
「きゃっ」
身を縮めるあたしを、音羽くんはふっと笑った。
「大丈夫。学校には雷落ちないよ」
彼はのんびりとそう言う。
「あ、うん……」
えっと……なんの話してたっけ……。