ぴっと両端を引かれて現れた桃色の丸い飴玉。
「……食べて」
癒すような優しい声。
唇にふにっと押し付けられたそれを、戸惑いながら口に入れた。
「おいしい?」
柔らかな笑みが首を傾げて問う。
「……う、うん。ありがとう」
気付けば心臓がばくばくしていて、男慣れなんてまだ全然していないことを自覚した。
音羽くんはただ親切でしているだけなのに。
だから、こんなに赤くなったら失礼なのに。
うつむくあたしの頭の上で声がした。
「ねぇ衣川さん。連絡先って聞いてもいい?」
へ? 連絡先?
「えっと。うん。クラスのSNSのグループから飛んでもらえれば」
「俺、それ入ってない」
「え? 本当? じゃあ招待するね」
「んーん、いらない。衣川さんのだけでいい」
「……そうなの?」
音羽くんは親切で優しい人だと思うし、喋りやすい人なのに、どうして一匹狼で誰とも絡まないんだろう。
人見知りなのかな。



