音羽くんは自分の席に戻ると、机の上でカバンを開けた。



そして何か取り出したと思えば、あたしの手をとって。



「あげる」


手のひらに乗せられたのは、紙に包まれた飴が3つ。



「なんて……腹の足しにもなんないかな」


申し訳なさそうな彼の笑みに、あたしは首を横に振る。


「ううん。ありがとう。でも悪いし……」



遠慮したほうがいいのかな、それとも受け取った方がいい?


そんな迷いに、飴の乗った手のひらは宙をうろついて。


その手の上からひょいっと色白の指先がひとつの飴をつまみ上げた。