ため息がでそうなほどの安心感に包まれて。


力がぬけていくみたい……。


涙がどっとあふれた。




「……駆くん、ありがとう……」



「なんで泣いてんの。いい子で待ってろっていっただろ」



そばに寄って、あたしの涙をすくう優しい指先。


いまだ息の上がっている彼は
ネクタイを緩めて、「あち」と笑う。



額に滲んだ汗、
一生懸命走って探して、ここまでたどり着いてくれたんだ……。



「……本当にありがとう」


「いいから。泣き止めよ」


「あたしのせいで補習になっちゃってごめんなさい……」


頭を下げたら、駆くんはかがんであたしの頬にキスをした。


「今宵に言われたから来たんじゃねーよ。俺が会いたくなったから来ただけ」



意地悪を混ぜ込んだ駆くんの優しい言葉。




あたしは温もりを感じた頬に手をやって、姿勢を直した駆くんを見上げる。



「だから謝んなくていい」



息をのむほど優しく笑う。


……本当に王子様みたいなひと。


きゅうっと、胸の奥が鳴いた。