そんなとき遠くから、小さく聞こえてきた。


「今宵―!」


……駆くんの声だ。


めいっぱい息を吸い込んだ。


「……駆くーん!」



こんな大声を出したのはいつぶりなのかもわからない。


あたしはただ、駆くんを求めて。


あたしを呼ぶ声に応えるように、何度も駆くんの名前を叫んだ。


そしたら、曲がり角の向こうから足音が近づいて。


「……見つけた。今宵」



あきれっぽい笑み、息を切らせてほっとため息を吐く彼は。



まるで王子様みたいに見えたの。