けっきょく教室まで送り込まれた。


「しっかり者の彼女でいいなぁ。今宵ちゃんも大変だね?」


理生に絡まれて「え」と声を止める今宵。ほんと男慣れしてない。

俺以外に慣れなくていいけどね、一生。



「うるせぇよ理生。俺は弁当の続き食べる」


「なんで弁当まだ食ってねーの? お前昼休みなにしてたんだよ」


「えー? それは……ナイショだよな?」


にやっと今宵に目をむけるとあからさまに顔をそむけるからちょっと笑った。


「じゃあ、教室戻るね……!」


その焦りに合わせてぴょこんと揺れる二つ結びのウェーブの髪。


「じゃーな」


隣の教室に入るのを見届けていたら、今宵は思い出したように再び顔を出した。



「あの……放課後、一緒にテスト勉強しよ……?」


俺が断るわけないのに、なんでそんな不安そうな声で聞く?


「……わかっ、た」


……なんだあの可愛い生き物。



しぼりだすような声になった俺を、理生が二度見する。


「え? ……駆?」


「黙れ。何も言うな。俺は弁当食うから」


そうして、授業開始のチャイムが鳴った。