【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。


「痛くない?」

「痛い」

「えっ!? ごめん!」

「やばいこれは今宵からキスでもしてくれなきゃ治んない」


痛みに顔を歪める駆くん。
慌てて消毒液を腕から離した。



「ご、ごめん。でもキスなんか……できるわけないじゃん」


ここ、外だよ。人だってまばらなりに通ってる。


「えー?」


からかうように笑う駆くん。
もう痛くなくなったかな?
じゃあ、再度……。


「ごめんね。もうちょっとだけ痛いの、我慢できる?」


そっと頭に手を伸ばした。


駆くんの髪を撫でると、
艶のある黒髪はサラサラと指間を通る。


「わ。髪、きれい……」


ついうっかり触り心地と見た目に魅了されていた。


駆くんって染めたことないのかな。
この駆くんの黒い髪って、あたし、


「すっごく好きだなぁ」


あたしもこういう癖のない髪質だったらよかったのに。



「おい、……いつまで撫でてんの」


ガシッとあたしの手を掴んだ駆くんは、上目遣い。

咎めるみたいな目。


だけど……。



「か、駆くん、顔赤いよ……?」


はぁ?と首をひねる彼は視線をあたしからずらして後ろ頭をかいた。


そしてため息を一つ吐いてから、あたしに近づいて。


ーーゴツ。


おでことおでこがぶつかった。


「むかつく」


その声が、甘く聞こえるのは。
心臓が暴れるのは。


「今宵はドキドキさせられる側だろ?何やってんの」


こういう駆くんにまんまとハマってしまっているから。