【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。

不慣れなヒールの足元がグラッと揺れた。


「ひゃあっ……!!」

「今宵!」


駆くんの短い声とともに、二、三段踏み外した、けど……落ちてはいない。


片足を宙に浮かせたままギリギリ止まることができている。


駆くんが咄嗟に手を掴んで、引き上げているから。


……びっくりした……。


あたしが両足を地面につけると、
目を見開く駆くんの口から思わずといった様子で声がこぼれた。



「あっぶな……」



ほんとに転げ落ちるところだった。
未だ呆然としながら、駆くんに頭を下げる。


「助けてくれてありがとう」


「無事でよかったぁ。まじでビビっただろーが」


「ごめんなさい……。気をつける。こんな慣れないヒール、履いてこなきゃよかったよね」



迷惑かけて、情けないよ……。


うつむくあたしの頭をぐちゃぐちゃっとかき混ぜる駆くんの手のひら。



「おいツムジ。顔上げて。俺が気をつけるからいいよ」


駆くんが?何を気をつけるの?


首を傾げたとき。


ーーぎゅ。

あたしの指に強く指を絡めた駆くんは、フッと笑った。


「これなら転ばねーだろ?」


そう、恋人つなぎをあたしの目の前まで持ち上げて見せつける。


「せっかく可愛いの履いてきたんだから、楽しめばいいじゃん」


きゅうん、と胸の奥が切ないほど痛くなった。


「……ありがとう」


ほとんど好きって意味の、「ありがとう」。