「観たいって言ってた映画の上映時間までその辺ぶらぶらしようぜ。の前に書店だっけ?」


「う、うん」


駆くんは、いつも通りスムーズな進行で。

デート、なんて気を張ってるのはあたしだけなのかもしれない。

こんなに緊張することってないのに。駆くんは寂しいくらい普段通り。


思わず力の入ってしまっていた肩に、駆くんの腕が周り、頭にポンっと手が乗った。


「今宵、いつもより背高い」

「ヒールだから……」



ーーコツン。


あたしの頭におでこをぶつけた彼は、にやり。
からかうような目であたしを見ている。


「俺のためにおしゃれしたんだ?」



カァッと顔が熱くなって、図星を突かれたあたしは一気にキャパオーバー。



駆くんの体を押しやりながら、真下くらい視線をさげつつ何度も頷いた。



「……変だったらごめん。本当にこういう、デート……したことなくて」


デートと言う単語の小ささに駆くんはプっと笑った。


「大正解。自信もっていーよ」


「……正解……」



すっごく嬉しい……。
思わずはにかんじゃう。



「だらしない顔」

「えっ!」


両手で顔を覆い隠した。


「いいね。そうやって隠してろよ。そんな可愛い顔、通りすがりのヤロー共に見せたくねーし」


「誰も見てないよ」


「見てる」


「目、隠さないでよ!歩けないよ……!」


「えー? 俺が目になんのに」


目元を覆っていた駆くんの手が離れると、私の視界にからかいを楽しむ駆くんが入ってきて、どきっとする。