「なんで覚えてないの! ほら、図書館の彼!」


「図書館……」


そう言われてやっと思い出した。


「あー……。喋ったかも」


「かもじゃないよ。いい感じだったじゃん?」




「なにそれ」


話の真ん中に声を落としたのは、駆くん。



「すげー興味ある」


そんなこと言ってる目が、全然楽しそうじゃないよ……?



「今宵が道に迷ったとき、他校の男子に助けて貰ったんだよ! 図書館まで送ってもらって、オススメの本まで教えてもらって、何度か会ってたじゃん!」




「あれはたった2、3回、しかも偶然図書館で会っただけで……」


「ふーん。なんだ付き合ったとかじゃないわけ」


「全然ちがうよ……!」




否定するあたしにまろやんが割り込んだ。



「一回私も見たことあるんだけど、イケメンだったよねー」


そんなこと言うから。


駆くんの口元は不機嫌そうに「へぇ」と歪んだ。