【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。

放課後、掃除当番を担ったあたしは、ゴミ箱を抱えながら裏庭を歩き回って、ゴミ捨て場を探していたんだ。




桜があちこちで舞い散っている校舎周り。


ときおり強く吹く風が視界を桜色に染める。



……きれー……。



そんな景色をうっとりと見渡しながら歩いていると。


……え?


信じられないものを目にしたあたしの足が、ピタッと止まる。


驚きのまま目を見開いて、桜の木の下にいる二人の男女を凝視してしまっていた。


だ、だって……。
こんなところで何しているの?


男子生徒が女子生徒の唇に、何度も唇を重ねて……。



男子生徒は手慣れたように、女子の足の間に片脚を割り込ませて、桜の木に押しつけていて……。




うそ……あれって、キス?


あんなの、ドラマや映画で見るのとは全然違う……。


生々しくて、はげしくて、官能的で。
心臓がバクバクした。



「んっ、……」


とろんとした顔の女子。


その後ろ頭を寄せて唇を塞ぐ彼に、全身が心臓なのかと思うくらい、ドキドキする。


……こんなキスがこの世にあるんだ。