「も、やめて……」


体をねじって駆くんの唇から距離を取ろうして向き合った瞬間、目があって顔を伏せた。


「なにその顔?」


そう言われてハッとする。
いっぱいいっぱいの余裕ない顔、絶対にぶさいくだった。


「……すげーかわいい。もっと見せて」


後ろからお腹に回ってあたしを抱きしめる右手。
駆くんの左手があたしの頬に伸びた。


それはあたしを彼の唇へと誘導する。


「駆くん」


「口閉じなくていいの?」

「え……?」


「深い方がしたいの?」


深い……!?


反射的に唇を結ぶあたしをみて、駆くんがくすっと笑った。


そのすぐあと。甘くて柔らかくて優しい感触。

駆くんのキスは、怖くなるくらい、あたしの神経を鈍らせる。


「……駆く、ん」


唇が離れてもなお駆くんは、唇が重なりそうな距離であたしを見つめている。


「……は、離して、」


「やだ。っていうか、忘れてない? なんでここに来たと思ってんの?」
 

「え……?」



にやり、桃色の唇から白い歯がいたずらげに覗く。


「お仕置きって言ったよね」