そんなあたしを、駆くんはやっぱり笑う。


「いいよねぇ、今宵のそういうとこ」


「わぁっ……」


急に重心が後ろに引っ張られて、倒れ込んだ先にスプリングのような弾力を感じる。


気付けばあたしはソファに座り込んだ駆くんの膝に乗せられていた。


「あたし……重いから」


腰を浮かせようとすると、駆くんの両腕はよけいきつくあたしを抱きしめた。


「今宵、いい匂い」


顔をうずめる駆くん。
すん、と空気を吸う音が聞こえて、ゾクっとした。


肩をすくめるあたしのポニーテールを触る駆くんの指先は本当にあたしの気持ちなんてわかっていない。


「離して……」


「なんで?」


「なんでって……」


「言ってくれなきゃわかんない。俺はこうしたいもん」


駄々をこねる子供のようにいたずらっぽい声。

駆くんってすごくずるいと思う。


「……うそつき。なにもしないって言ったのに」


「なにもしてないじゃん」


そんなことを言ったそばから彼は。


あたしの髪をよけて、後ろ首に柔らかな感触を押しつける。


――ちゅう。


駆くんの吐息がかかる。


何もしないなんて、嘘つき……っ。



唇の柔らかさは、なんども首にふれては離れて。



「駆く、ん……っ」


ゆるすことなくあたしの心臓を甘く高鳴らせる。