そうしてたどり着いたのはもちろん俺の家なんだけど。


「……マンション?」


「うん」


ピピピとエントランスの鍵を解除して、7階。俺んち。



「やけにソワソワしてるけど、どうした?」


なんてわざと聞いてみる。



「あたし……手土産の一つも持ってきてないし……親御さんに挨拶とか……」


そっちかよ。

もっと考えることは他にあんだろ。


「両親とも先週から仕事で海外行ってるから家には誰もいないよ。大丈夫」


そう答えたら、今宵はホッと息をついた。


だからほっとすんなって。



誰もいないから大丈夫、なわけねーだろ。


安心で満たされた油断だらけの今宵の耳もとに唇を近づけた。


「誰もいないから……いろんなことできんね?」


――カチャン。


鍵を回し開けて

「どーぞ」と家の中に手を向けるころには、今宵の頬は今日一の火照り方。