「ゆらく……由良くんってば、」



学校を出て、電車に乗り、マンションのエレベーターに乗るまで、
由良くんは私の手首を掴んで離さなかった。


名前を呼んでも無視。

一言も話してくれない。


しかも眉間に皺が寄っている。

どう見ても不機嫌。


私、何かした?



ポンとエレベーターが止まる。

由良くんの後に続いて廊下を歩く。




「ねぇ、由良くん。なんでそんなに不機嫌なの」

「……」

「私、なにかしちゃった?」




玄関の扉の前で、由良くんは立ち止まった。

短く息を吐いて、私を見る。


もう眉は寄ってなくて、でもどこか悲しそう。




「俺も、お前と変わんねーなって、思っただけ」