小さい頃、風邪を引いた私の手をずっと握っていてくれた由良くんのことを思い出して、

"幼なじみから抜け出すのが怖い"と、ここまできてそう思ってしまった。



そう思ってしまったから、由良くんの手を離した。




『俺を引き留めた時点で、俺らは、もう元の幼なじみにはもどれねぇよ』




その後のことだった。こう言われたのは。


ギュッと、由良くんが私の手首を強く掴む。

"逃がさない"と、言われているみたいで。

また、泣きそうになる。



『お前、今までの関係を壊したくないって思ってるんだろ』



そうだ。

私は、自分の気持ちを自覚してもなお、幼なじみとしての関係を壊したくないと思った。


恋人という、終わってしまう可能性がある関係が怖いと思ったからだ。