「また、誰にも言えないで何か抱えてんの?」
俺の言葉に、萩原は目を見開く。
「……なんで?」
「今日1日、ずっと不安そうな顔してたから」
そう言うと、「そっか」とほんの少しだけ顔を和らげた。
そして、
「私のこと、見ててくれたんだ」
なんて、変なことを言うから。
「見てるよ。前みたいに倒れられたら困る」
周りと比べて大人びている萩原は、誰かに頼ることを避けるような人だ。
だから、急に体調を崩しても誰にも言わないで1人で抱え込んでいた結果、
授業中に、倒れてしまったことがあった。
「……由良くん、」
静かな声で、萩原は俺の名前を呼んだ。

