全ての授業が終わった放課後の教室、

もうとっくのとうに帰ったと思っていた萩原に声をかけられたのは、日直日誌を書いている時だった。



「心ここにあらず、だね。由良くん」



そう言いながら、俺の隣の席に座る。

萩原はどこか大人びていて、柔らかく笑う顔が印象的の女子だ。



「帰ったんじゃなかったの?」



教室にはまだ数人、クラスメイトが残っている。

雑誌を広げて楽しそうに話す声が、響いていた。



「うん。諦めて帰ろうかなーって思ったんだけど……やっぱり戻ってきた」

「なにそれ」



は、と小さく笑うと、萩原も笑った。

笑って、黙ってしまう。


その顔はどこか強張っていて。

だから、