その場から動こうとしなかったアイツの名前を俺は呼んだ。



『……由良くん、』



その時の結佳の表情を、よく覚えている。

眉を八の字にしてとても悲しそうで、不安げだった。


最初は、学校で何かあったのかと思った。

でも、



『……仲良しだねぇ』



そう言いながら苦しそうに笑った結佳を見て、
その時の俺は、期待した。



他の女子と一緒にいるところを見て、嫉妬してくれたのかもしれない、って。



いつからか、アイツのことをただの幼なじみとして見れなくなっていたから。


結佳も、俺と同じ気持ちかもしれないと
そう思った。



でも、その一瞬だけだった。