朝、7時40分

私の姿を見て、由良くんのお母さんは驚いたように「結佳ちゃん」と言った。



「由良ならだいぶ前に学校行ったよ?アイツから聞いてない?」

「……私ってば、忘れてたみたい!」



あはは、と笑って「行ってきます」と言う。

そして玄関の扉が閉まったのを確認して、ため息をついた。



「そりゃ、そうだよね」



1人で駅までの道のりを歩く。



……由良くんにキスをされた。

でもそれは、決して甘いものなんかじゃなくて。
痛々しくて、苦しかった。



『帰って』



由良くんは最後にそう言った。



電車に揺られながら、昨日のことを思い出す。


でも、じゃあ、

私はどうすれば良かったの。