「…別に、私はここでいい。というより、外に出る必要性を感じない。」

「…何か、見たいものとかやりたいこととかないの?」

「特にない…」


私の無機質なその答えに、彰は少しだけ悲しそうに顔を歪めた。


……どうして?


何故あなたはそんなに悲しそうな顔をするの?


今日の彰は少し変だ。


「…分かった。梨那と過ごしたかったんだけど、残念だな。じゃあ、僕は出かけてくるから、お留守番よろしくね?」


彰はそう言って、私の額や頬にキスを落とした。


最後は、唇にキスを落としてくる。


だけど、いつもの強引な感じではなく、彰にしては優しくいたわるようなキスだった。


彰は唇を離すと、名残惜しそうに私を見つめてくる。


「…じゃあ、行ってきます。」

「…行ってらっしゃい。」