そんな彼女には、“幻の花の妖精”という別名までついている。


とにかく、“神山 梨那”という名前は、上流階級では知らない人はいないくらい。


俺の家は、ザ・金持ちってわけじゃないけど、父は大学病院で働いている医者で、母も同じところに看護師として勤めている。


だから、一般家庭よりは裕福な方だと思うし、そういった上流階級の情報も、一定のものは入ってくる。


特に神山グループの情報は。


「あの…すみません。一つ聞いてもいいですか?」


俺が頭の中でぐるぐる考えていると、先輩が言葉を発した。


「なんだ?」

「あの…僕の兄貴は、このことを知っていたんでしょうか?」

「…ええ、もちろん知っていましたよ。恭平は僕の親友の一人でしたから。」


梨那のお兄さんの享さんが答える。


「そう、ですか…」