あいつはそう言いながら私を軽々抱き上げる。


「…今の姿の私を誘拐なんてする物好きなんかいない。」


いるとすれば、今目の前にいる彰くらいだ。


今は変装している。


もし、変装していなければ、私の本当の正体を知る人に誘拐されたかもしれない。


でも、今の姿の私は、黒髪黒目のどこにでもいる女の子。


むしろ平凡以下だ。


こんな私を誘拐する人なんているわけない。


第一、誘拐されたら困るから、なんて、彰が言える立場なのか。


厳密に言えば、私の方から彰のところに来たわけだけど、何も好き好んで彰のところへ来たわけじゃない。


私が来なければ、私の周りの人達が一人ずつ殺されてゆくから。


立派な脅迫罪及び未成年誘拐だ。


「…梨那は何も分かってない。目の色と髪の色を変えただけじゃ、梨那の可愛さは隠れないんだよ。」