梨那side♬


家を出て静かに外を歩く。


外灯もなく、真っ暗な闇のような夜の道は、まるで私の心の中のよう。


ただひたすら、あの場所を目指して歩き続ける。


そう、5年前、一ヶ月間過ごしたあの場所へと………




どのくらい歩いただろうか………


角を曲がったところに黒い車が止まっていた。


この車…


私がもしかして、と思う暇もなく、運転席から誰かが降りてきた。


「やあ、梨那。やっと来たね。もう少し遅かったらどうしようかと思ったよ。」


そう言って綺麗に微笑むあいつもとい彰。


でも、その目は異常に冷たい。


「…わざわざ迎えに来たの。」


そう聞き返した私の声は、自分でも驚くほど冷たいものだった。


「当たり前だよ、こんなに可愛い梨那をあそこまで一人で行かせられないよ。他の誰かに誘拐でもされたら困るから。」