「じゃあ、熱とかはないのね?」

「はい、ないと思います。」


俺は、念のために気を失っている梨那のおでこに手を当ててみる。


…うん、ない。


にしても、少し苦しそうな顔してるな…


そっと手を握ると、微かだが、梨那が握り返してきた。


起きたのかと思えば、相変わらずその瞳は閉じたまま。


「きょうちゃん…せいちゃん……行かないで………」


彼女はそう呟きながら、閉じられた瞳から一粒の涙を溢した。


俺はその様子を見て、胸の辺りが締め付けられたように痛くなった。


「ごめん…ごめんな、梨那………お前がこんなに苦しんでるのに、俺は何もしてあげられないっ………」


無意識のうちに出た弱々しい本音。


「…あなた達に何があるのかは分からないわ。だけど、彼女が起きた時に、あなたがそんな顔をしていたら、彼女が不安がるんじゃない?」