茉依side♬


フッと望月君の腕の中で意識を手放した梨那。


すると、それと同時に、今まで静まり返っていた周りの人達が一斉に騒ぎ出した。


「え…あの転校生の先輩と梨那ちゃんって知り合いなの…?」

「でも、梨那ちゃん、あの人のこと異常に怖がってなかった…?」

「じゃあ、あの人に何かされたとか…?」


あちこちで勝手な妄想を繰り広げて騒ぐ人達。


私は、凜の方に視線を向けてお願い、というように一つ頷く。


凜も一つ頷き返すと、いつもよりもワントーン低い声を出す。


「…一回、全員黙ってくれない?」


凜の発したその言葉に、この場にいる全員が顔を青くして口を噤む。


「…あのさ、この状況についていけないのは分かるけど、好き勝手なこと言わないでくれない?始めに言うと、この人と梨那は昔の友達。さっき梨那がこの人のことを怖がっていたのは事実だけど、それにはちゃんとわけがある。そして、それはこの人のせいではない。断じて。」