「…梨那、俺少し用があるんだ。だから、その間ゆみのところで待てるか?」


出来るだけ自然な笑顔で、抱きついてくる梨那の頭を撫でる。


「え?私?てか秀、あんた逃げる気でしょ?」


…ゆみ、分かってんならそれを言うな。


「秀にぃ行っちゃうのいや。今は秀にぃがいいの。秀にぃはりぃのこと嫌い…?」


さっきよりも潤んだ目で見つめてくる梨那。


…そんなこと言われたら、離れられないじゃないか。


梨那を嫌いなわけないし、むしろ好きすぎて困るくらいだ。


「…梨那を嫌いになるわけないだろう?」


俺がそう言えば、まるで天使のような笑顔を向けて、胸に擦り寄ってくる。


「ほんと?秀にぃ大好きっ。」


…あー………マジでなんなの。


これを計算じゃなくて、素でやっていると知っているからこそ、恐ろしいと思う。


改めて身をもって感じたことーーー



無自覚って、ほんと怖い……