「え…」


おかしい。


颯とこんな恋人みたいに手を繋いでいるなんて。

颯なんかにこんなにドキドキしているなんて。

青山くんに誘われた時は全く感じなかった、苦しいくらいに鳴り続ける心臓。


…その全てがおかしくて。


「俺と、あいつと、どっちと行く?

お前が決めればいい。…でも」


颯の猫みたいに綺麗な目が挑戦するように私を見下ろす。

至近距離で息すらかかりそうで、固まる。


「お前は俺を選ぶでしょ」


「…っ」


なんでだろ。

いつもなら言い返したり、バカじゃないのって笑ったり、怒ったり、できるのに、

なぜか今は、呼吸が止まったみたいに、何も言えない。


颯の目が、怖いくらい真剣で。