「あのさ」
中学2年の夏。
帰宅するため、友達と数人で廊下を歩いていると、やけに深刻な表情をした男子に声をかけられる。
「今、ちょっといいかな」
その目は明らかに私に向けられていて、驚く。
「え、いいけど、…どうしたの?」
彼は確か、同じクラスの青山想太(そうた)くん。バレー部だかに入っていて、ごく普通の、特に目立つわけでもない男の子だった。
だけど誰にでも人当たりが良くて、友達は多そうだ。
私は彼とほとんど喋ったことがなかった。
一学期、席が前後になって、ほんのたまに雑談をしたくらいで。
「ほのか、私たち先帰ってるね」
「ごゆっくり〜」
あ、ちょっと、と引き止める間も無く、妙にニヤニヤした友達が小走りで去っていく。
「もうすぐ、夏祭りだよね」
突然そう言われて、私は戸惑いながら頷く。
中学の近くで毎年行われる夏祭りは、うちの中学の子なら大体みんな参加する。

