それは唐突にやってきた。
周りから見れば唐突ではないのかもしれない。
しかし私からすれば唐突だったのだ。

「誰を信じればいい?誰を疑えばいい?」
彼は人を信じることの出来ない状態に陥っていた。
周りから後ろ指をさされていることは分かっていた。
しかしそんなこと信じたくはなかった、信じれなかった。
「逃げ場がない。消えてしまいたい。」
そんなことがグルグルと頭の中を回り正常な考えをすることも許されない。
彼は恵まれていない訳では無い。
住むところがあり、職もあり、友人もいて、愛する人もいて、何不自由なく見える。
…何かが足りない。
人というものはいかに承認欲求があるのかということを思い知らされる。
少しでも反対している人や自分を嫌っている人がいると不快に思ってしまう。
その人たちにも認めてもらいたいのだ。
「…死のうかな」
浅はかに思ったそれは正常な状態では想像もしないことだった。
しかしその時の彼にはそのことが唯一の救い、自分が助かる方法のように見えていた。
悲しむ人はいない、喜ぶ人はいるだろう、そんな風にも考えていた。
そんなことをグルグルグルグル考えて疲れて眠りにつく、そしてまた次の朝がやってくる。

「こんなに辛いことがあるなら生まれてこなきゃよかった…」