こうして今、雛は一人で韓国の街を歩いている。韓国語は話せないため、翻訳アプリの入ったスマホは手放せない。

「アニョハセヨ(こんにちは)イエッポヨ!(可愛いね!)」

ニコニコしながら歩く雛に、韓国人男性が話しかける。

「カ、カムサハムニダ(あ、ありがとう)」

雛は翻訳アプリを駆使し、なんとかお礼を言った。



雛は、屋台に売られていたおいしそうなタッカンジョンを買って食べる。タッカンジョンとは、甘辛いソースがたっぷり絡まった日本の唐揚げのような食べ物。辛いものが苦手な人でも食べることができる。

「おいしい!」

ベンチに座り、雛はタッカンジョンを食べる。友達はプデチゲや豚ホルモンなど辛いものを食べているのだろうか。

ベンチには、雛の他に一人の男性が座っていた。オックスフォードシャツに黒いスキニーパンツとおしゃれな格好だ。黒いサングラスをかけている。

「あなたは、日本人ですか?」

男性がタッカンジョンを食べ続ける雛に話しかける。雛は「え、はい……」と日本語で話しかけられたことに驚く。韓国に住んでいる日本の人だろうか?