「ばか」 耳元で囁かれて、急に視界が暗くなった。 何も見えなくて、一瞬焦るけど。その声だけで誰が来てくれたのか、わかってしまう。 「廉くん……」 わたしの両目を片方の手のひらで塞ぐ廉くんは、もう片腕でわたしの体をぎゅっと抱きしめて、 「……おまえ、何やってんの。 怖がりのくせに、大声出して……」 「……っ」 保健室まで聞こえた、と呆れたような廉くんの声は、優しかった。 だって……。 廉くんが悪く言われるのが、耐えられなかった。 自分のことより、ずっと。