5時からはじまる甘い罠。




きょう…


……何球、したんだろう……


わたしたちがバッティングセンターを出る頃には、とっくに日が暮れていた。


廉くんはスマホの時計を見て、もうこんな時間か、とおどろいた。



「夢中になるとあっという間だね」



「……」



わたしは腑に落ちない表情で曖昧にうなずく。


結局ほとんどわたしがボールに追い詰められて終わってしまった。



「なんかお腹すいたな。

ねえ、もうひと修行するよね」



にこり、と微笑まれて、もう目を白黒させてしまう。



「え、でも……、わたしもう」



疲れたから帰りたい、と言おうとして、



「栞菜。腹が減っては戦はできぬ、っていうでしょ」



訳のわからない理屈で、わたしを引っ張っていく廉くん。


心のなかで叫ぶ。


……だ、だれか。


このドSなひとからわたしをたすけて……