5時からはじまる甘い罠。




「ちょっと。もっと腰入れないとさ」



後ろに立っている、廉くんのダメ出しが聞こえるけど。


わたしは必死で。


その内容も頭に入らない。


ただ、こわすぎて。



「きゃーー」



「ぶ」



ドン。



わたしの背後の金網に、機械から放たれたボールがぶつかった。


ひいいぃ……


わたしは完全に腰が引けた姿勢のまま固まってしまう。



「栞菜、もはやバット降る気ないじゃん」



ダメ出しをする廉くんは、なんだか嬉しそうだ。


わたしは知っている。


わたしが必死でボールを避けるさまを、後ろから見て何度も吹き出していることを。