「ちょっと。もっと腰入れないとさ」
後ろに立っている、廉くんのダメ出しが聞こえるけど。
わたしは必死で。
その内容も頭に入らない。
ただ、こわすぎて。
「きゃーー」
「ぶ」
ドン。
わたしの背後の金網に、機械から放たれたボールがぶつかった。
ひいいぃ……
わたしは完全に腰が引けた姿勢のまま固まってしまう。
「栞菜、もはやバット降る気ないじゃん」
ダメ出しをする廉くんは、なんだか嬉しそうだ。
わたしは知っている。
わたしが必死でボールを避けるさまを、後ろから見て何度も吹き出していることを。
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