「栞菜」 登校途中の道で、偶然声をかけられる。 誰だかすぐにわかって、わたしは慌てて振り向く。 「おはよ」 ーーわたしをわらしとよばないのは、廉くんだけだ。 「おはよう……」 挨拶を返すと、廉くんはあくびをした。 少し眠そうだけど、朝も相変わらず綺麗な彼。 なんか最近寒くない?と手のひらを擦り合わせるようすを、緊張しながら横目で盗み見た。 放課後に街に繰り出すことには、特訓のおかげで少しは慣れてきた。 だけど、誰かと一緒に登校するのに慣れていないからか、今はすごくぎこちない。