「それに俺、聞いちゃったから。
栞菜の変わりたいって言葉」
それも言ったそばから後悔し始めているんだけど……。
「……っ。だけど」
「じゃ始めに、廉(れん)って言ってみて」
目を丸くするわたしに、更科くんは付け加えた。
「俺の下の名前。プロデュースするかわりに、そう呼ぶこと」
唖然として固まるわたしの顔に、更科廉は手をさしのばす。
ぴくりとしてもおかまいなしに、彼はわたしの長く伸びきった前髪を持ち上げて抑えた。
「かなり長いね」
「……う」
普段表情を隠すために伸ばしていた前髪がなくなり、露わになる。