目の前のとびきり魅力的な笑顔。
でもわたしには、もう考えが読めない。
「あの……わたし、やっぱり」
やめます、と言いたくて。
怪しい予感にすっかり怯えて逃げようとするわたしに、更科くんははっきりと宣言した。
「いや、もう逃がさない。
ドラえもんの恩をもう忘れたの?
意外と薄情だな」
「……えっ」
痛いところをつかれて黙ってしまう。
なんだか、もうすでに先生と生徒の構図が出来上がっている気がする。
もしくは主人と忠犬…
今更ながら、彼とわたしの間の圧倒的な人間レベルの差を感じる。
初めから敵うはずがなく。
これから翻弄される予感に身震いした。

