「……ねえ。
声、かけられたくなかったら、無視して」
どのくらい時間が経ったのかわからない。
涙でぐしゃぐしゃの顔を上げると、目の前に更科くんがしゃがみこんでわたしを見ていた。
「あんた……いつもひとりでいるって聞いた。
……俺、あんたのこと、ぜんぜん、よくしらないけど。
偉そうなこと言えないけど。
でも……怯えてないでさ、戦わなきゃダメだよ。
変わりたいんでしょ」
その目はまっすぐに、わたしを見つめる。
驚くことも忘れて、わたしは惚けたように彼の真剣な眼差しに見惚れる。
ああ、この人って、なんて綺麗。
涙が出そうなほど。
「話すこと、伝えること、諦めていたはずなのに、……どうして泣いてるんだろう」
思わず、そう口に出していて。
突然訳のわからないことを言ってしまったと思うのに、更科くんはすこし視線を逸らして考えてから、すぐに答えた。
「それは、橘さん自身が、ほんとは諦めたくないと思ってるからじゃないの」

