「それって、かなり古そうだけど。
大切なものなの?」
彼の聞き方には嫌味なところなんてないのに、わたしは恥ずかしくて顔もあげられない。
もう音のしない鈴。
汚い、古ぼけたもの。
そんなものを身につけていることを、この洗練された人に知られたのが恥ずかしい。
「……えーと」
彼が続けて何か言いかけた瞬間、わたしは思わず駆け出した。
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「……っ」
教室の前の廊下を走り抜けて、全速力で階段を降りる。
「……うっ」
玄関まで来たとき、わたしはしゃがみこんだ。
弱虫。ダメなやつ。
言いたいことも言えないで、暗くて、自分のことばっかり。
だから独りぼっちなんだ。
「うっ……」
そう思ってあきらめていたはず。
こんな風に情けないのはいつものことのはず。
「うぅ~……」
なのになんでこんなに涙が出るの?
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